花の色あわせ・・・ムードに合わせての色選び from アメリカ
花一輪、それだけでもシンプルで美しいものですが、その花に少しづつ他の花を足し、色を足していくと。。。センスのよいアレンジに仕上がりますね。
しかし、花の色合わせは、アレンジメントの要素の中でもとてもむずかしいものです。花選びのページで、花の役割を踏まえて、ラインフラワー、フォーカルフラワーそして、フィラーフラワーなどをあわせるとアレンジができると言いました。そこに、色を足すとなると、さてどうしたらよいでしょうか?
色の与える影響
色には人に与える心理的な作用があります。"Color Research"という統計によると、人は相手の人、もの、または部屋などを見た瞬間(厳密に言えば90秒以内に)、好きか嫌いか、心地よいか、いやな感じがするか。。。などの感情を瞬時に持つそうです。その基本となるのは、60%以上の割合で実は色が作用しているというのです。
つまり、なんとなくそんな気がする。。。というのは、実はかなりの部分で色が影響を与えているというわけです。
あなたの好きな色は何ですか? ピンク?ブルー?それともオレンジ?
その好きな色というのは、普通何かの思い出や物語に通じているもの! だから、気持ちをとてもポジティブに、明るくしてくれるといいます。
そのように教えてくれるのは、アメリカの色の第一人者、色のグルといわれているLeatrice Eiseman リアトリス・アイズマン。彼女は、世界的に有名な色の会社、"The Pantone Color Institute"パントーン・カラーの重役も勤めている、色のスペシャリストです。
アメリカには大きな花の組織団体SAF (Society of American Florists)がありますが、その団体がリアトリスと組んで、"Flower Therapy" =フラワーセラピー(Floral Management,July 2004, page21)と題して、アメリカの花業界の市場拡大のためにキャンペーンを行いました。それは、2004年の5月にテレビで大々的に放映され、人気を得たものです。
→ (Floral Management,July 2004,p.21)(*1)
そのフラワーセラピーのご紹介の前に、まずは、色の基本的な知識を整理してみましょう。
色の基礎知識
色の3原色はご存知ですか?
それは、赤、黄色、青。
そして、それらの原色を等量まぜあわせると、橙(オレンジ色)、緑、紫ができあがります。 これらを二次色といいます。
そしてまた、その原色と二次色を等量まぜあわせると、今度は中間色と呼ばれる色ができあがります。
それらは、イエローグリーン(黄緑)、ブルーグリーン(青緑)、ブルーバイオレット(青紫)、レッドバイオレット(赤紫)、レッドオレンジ(赤みの橙)、そして、イエローオレンジ(黄みのオレンジ)となります。
→ ("Basic Color Principal" The AFS Color Wheel,)(*2)
この上記の12色を"Hues" 色相と言います。これらは、代表的な色の名前。そして、この写真にあるように、色を円状にわかりやすく配置した図を"Color Wheel"カラーウィール、または、カラーサークルとも呼びます。
→ ("Color Harmonies" The AFS Color Wheel,)(*3)
これらの写真は、AFS "American Floral Services, Inc." が出している出版物から引用しています。
さて、こういう色相を持つ花を、どうやって組み合わせていくと、きれいなアレンジになるのでしょうか?
ここで始めてご紹介するアメリカの"Flower Therapy" (フラワーセラピー)も、一つの方法論に入れて、私からは、4種類の配色の方法をご紹介いたしましょう。
"Warm Color" ウォームカラーと"Cool Color" クールカラー、というのを聞いたことがありますか?よく、ファッションでも使われる言葉ですね。
"Warm Color" ウォームカラーとは、文字通り、暖かい感じのする色合いという意味で、暖色系です。赤、オレンジ、黄色など、色合いにどちらかというと、黄色味が少し強く入っているかな?という感じがする色の組み合わせになります。
暖炉の火が赤々と燃えるような、暖かい感じをかもし出す色合いの組み合わせになります。例としては、赤やオレンジのコンビネーションのアレンジ。または、黄色系のアレンジ。明るいピンク系のアレンジなど。
その反対に、"Cool Color" クールカラーと呼ばれるものは、涼しい感じのする色合いのことを指します。ブルーや紫、または、青みがかった色の薄いペールピンクなど。文字通り、クールなイメージを創り出す、寒色系の色合いのことを言います。
一例としては、ブルーのデルフィニウムをたくさん入れたアレンジとか、グリーンの葉ものと白たっぷりのアレンジも素敵ですね。
ですから、アレンジメントを単純に、"Warm Color" ウォームカラー、または、"Cool Color" クールカラーにするのか、という判断で色を決めて花を揃えると簡単ですね。とてもシンプルな色合わせの出来上がりです。
この色合わせは、初心者向きと言えるでしょう。覚えておいてくださいね。
さきほどの原色から派生した12色の配色の位置、上記の写真にあるカラーウィールを覚えておくと、とても便利です。
こちらの色合わせは、「大切な花選び」のページでも少しご紹介いたしました。これも初心者向けになります。
簡単な順に並べてみました。
一色濃淡 or 同系色: "Tone in Tone"(トーン・イン・トーン)
Monochromatic(モノクロマティック)
フラワーアレンジメントにおいては、最も活けやすい花の組み合わせといわれますから、初心者は、ここからスタートするとよいでしょう。例えば、ブルーなら、濃いブルーと薄いブルーを合わせたり、黄色も濃い色と薄い色を合わせたりすると、とても静かで落ち着いた感じのアレンジに仕上がります。
ただ、おとなしい印象のあまり、おもしろみやインパクトに欠ける場合がありますので、質感の違う花どうしを合わせたりする工夫が必要です。この一色濃淡に慣れてきたら、次に、類似色にトライしてみてください。
この写真の例としては、濃いピンクのラナンキュロスやチューリップに、薄いピンクのゆり、それにもう一つ、もうちょっと薄いピンクのラナンキュロスを組み合わせるなど。このように、3種類の質感の違う花を組み合わせると、より素敵になります。しかし、むずかしかったら、最初は2種類の花合わせからスタートしてみてください。
類似色:
Analogous(アナラジャス)
色が似ている花どうしを合わせてアレンジすると、とてもまとまりやすく無難です。そして、やわらかい印象になりますので、誰からも好かれる色合わせになります。
例えば、一番わかりやすい例としては、この写真のように、黄色とオレンジを合わせる。
この右側の写真の例としては、薄い黄色のカーネーションにオレンジレッドのバラを入れて、後もうひとつ何か薄い黄色かオレンジの菊をあわせてみたりすると、全体に統一感がとれてきれいにまとまります。また、もう少し濃い色の赤も入っています。
ここでもまた、出来れば3種類の質感の違う花合わせができると、より素敵です。でも、まずは2種類からスタートしてみましょう。
反対色:
Complementary(コンプリメンタリー)
カラーウィールにある反対の位置にある花どうしを組み合わせます。とてもインパクトの強いアレンジに仕上がります。キーカラーに相対する、ちょうど180度の位置にある色とあわせることを言います。かっきりと、正反対の位置にある色のことを指します。
例えば、黄色とブルーや紫。黄色のカラーリリーやひまわりなどに、濃いブルーのデルフィニウムなどを組み合わせると、とても印象の強いアレンジになり、すてきにまとまります。刺激的な配色なので、上記の一色濃淡や類似色のアレンジより、男性はこちらを好むケースが多いようです。
補色:
Split Complement(スプリット・コンプリメント)
この定義は、ほとんど反対色の配色と同じです。しかし、カラーウィールの上で、キーカラーに対して、カラーウィールで向かい合う150〜210度の位置にある色のことです。
とてもわかりやすい例としては、赤と濃いグリーンは反対色ですが、この写真のように、そのグリーンより少し明るめのグリーンをあわせる方法です。こちらもまた、大変コントラストの強い、刺激のある個性的な配色になります。
トリアード:
Triad(トライアッド)
カラーウィールの上で、等距離にある3色を使った配色のことを言います。とてもわかりやすく言えば、3原色の赤、黄色、そして青の3色を使ったアレンジ。とても強い印象を与えるアレンジとなります。
この写真にあるように(青の色みが少し足りませんが)、それらの色に、少しづつ色の濃淡を入れていくと落ち着いたアレンジになります。
しかし、このトライアッドは、色の割合のバランスがとりにくいので、初心者にはむずかしいでしょう。
今度は、アレンジメントの出来上がりイメージを具体的な言葉に表現してみてから、花の色合わせを決めるというやり方です。
私たちは、色に対して同じような反応やイメージを持っているものです。例えば、「ロマンティック」と言えば、「淡い、甘い、清楚、メルヘンチック・・・」など容易に想像できますよね。では、「カジュアル」と言えば、どうでしょう? 「はつらつとした、健康的、明るい、元気な」などをイメージするものです。
これらのイメージを大切にしながら、色に置き換えてアレンジメントに表現していく方法です。
言葉のイメージはたくさんありますが、例えばこんな感じです。
ナチュラル
安らぐ感じ。自然で素朴。親しみのある暖かさ。
<色>: ベージュ、クリーム色、薄オレンジ、薄いグリーンなど。すがすがしい草原の自然の中にいるような感じのする色合い。
カジュアル
はつらつ。健康的。陽気で明るい。元気いっぱい。躍動感。
<色>: 黄色、オレンジ、赤、青など。ぱっと鮮やかな感じのする色合い。
エレガント
優雅。落ち着き。上品。高貴。
<色>: ペールがかった、グレイッシュな色合い。薄い紫や薄ピンクなど。微妙な色使いが品のよさを現すので、配色センスが必要になります。
ロマンティック
甘くて、優しい印象。メルヘンチック。清楚な感じ。
<色>: ペール調でまとめる。薄いピンクや淡いベージュ、白、薄グリーンなど、透明感のある淡い色調にすると素敵です。
トラディショナル
伝統的な格調高い感じ。壮厳。重厚に。
<色>: 渋く、深みのある色合い。濃い赤、深みのあるオレンジ。濃いグリーンなど。少し重い感じのするトーンの組み合わせになります。
ドラマティック
洗練されて存在感のある感じ。カリスマ的。スタイリッシュ。モダン。ハイセンス。
<色>: 濃い色合いとビビッドな鮮やかな色合いの組み合わせ。濃いブルーに真っ白。微妙な赤の濃淡色など。個性的な形の花が似合います。
かわいらしい
フェミニン。プリティ。キュート。愛らしい。初々しい。
<色>: ベージュ、オレンジの濃淡色。ピンクの濃淡色。パステルカラーをふんだんに使うとかわいい雰囲気がでます。
さて、いかがでしょう。言葉のイメージからお花のイメージへ、繋がってきましたか?例えば、格調の高い、ヨーロッパの雰囲気のする教会で結婚式というのを想定してみましょう。そこには、どんなに自分が好きでも、自然の草原の香りのする麦の穂や淡い花使いなどは、どうしても合わないのがわかりますよね。やはり、重厚な雰囲気を出すクラシックな色調のアレンジメントが映えることでしょう。
また、その反対に、ガーデンパーティなどには、重々しい感じのする赤をたっぷり使ったアレンジメントは、似合わないものです。
言葉のイメージと色と花と結びつくようになると、とても楽しくなりますよ。
アメリカのフラワー業界が提案する、"Flower Therapy" (フラワーセラピー)
それは、ある色合いでまとめられた花のアレンジメントは、コミュニケーションツールとして、相手にメッセージを送るもの、つまり、気持ちを伝えるというものです。
→ (Floral Management,July 2004,p.21)(*1)
言葉からのイメージではなく、特に、ギフトとして送る場合の相手側の気持ちを重視して花の色合わせをする、という考えです。プレゼントとして花を贈る場合に、参考になさってください。
もともとは、アメリカの花屋さんへのアドバイスから出てきた配色方法ですが、花屋へ頼むときも、もちろんあなた自身が活けるときも応用できます。
なぜフラワーセラピーと名づけたか、きっとお分かりになることでしょう。
この色合わせは、5つに分けられています。
わかりやすいように、左側にその色合わせのイメージの写真を、そして、右側にLeatrice Eiseman リアトリス・アイズマンの本からのイメージカラーの写真を載せました。
Left colum: → (Floral Management,July 2004,p.21)(*1)
Right colum: → "Colors for your every mood" by Liatrice Eiseman(Capital Books,Inc.)(*4)
"Nurturing" = ナーチャリング (癒しの花)
"Nurturing" は、育てる、栄養を与えるなどの意味で、母親が子供を育むという暖かいイメージを含みます。優しく包み込むようなイメージ。ホッと気持ちが和む感じ。癒される。暖かい気持ちになる。
出産のお祝いに。お見舞いの花に。慰めの花に。
<色>: ベージュ、ソフトイエロー、ピーチ色、薄ピンク、薄黄緑のグリーンなど。
"Tranquil" = トランキル (心を鎮めて落ち着かせる花)
"Tranquil" は、静かな、穏やかなという意味です。だから、気持ちを落ち着かせたいときに、最適です。ブルーの色がその役割をしています。寝室にブルーの色があると、よい睡眠がとれるとありますね。
いつも忙しくしている会社勤めの方へ。時間に余裕のないママさんへ。ストレスを抱えている人へ。
<色>: 透明感のする感じの色合いでまとめる。クールカラー。ミスティブルー、グレイッシュなブルーや紫、ピンクなど。
"Sensuous" = センシュアス (情熱的な花)
"Sensuous" は、官能的な、情熱的なという意味です。重厚な色合いのイメージを含みます。
エレガントなディナーパーティ、または格式のある集いに。スペシャルな場面に。クラシックな感じのするときに。
<色>: 濃い赤、オレンジレッド、エンジ色。濃い紫など。
"Whimsical" = ウィムジカル (うきうきするような明るい花)
"Whimsical" は、はずむようなという意味が入っています。軽快な感じがでるといいですね。
子供の誕生日に。卒業や昇進などのお祝い事の行事に。
<色>: 気持ちがパッとするようなビビッドな色使い。はっきりとしたアレンジメントを心がけるとよいでしょう。カラーウィールにある12色使いはいかがでしょう。赤、黄色、青、グリーンなど。
"Romantic" = ロマンティック (甘く優しい花)
"Romantic" は、もともとは空想にふける、という意味があります。ですから、甘いイメージに溶けてしまうような、ふわっとベールがかかっているような感じがでてくるのでしょう。優しい感じがだせるといいですね。
ロマンティックなムード作りに。愛の告白に。結婚記念日に。教会のウェディングに。
<色>: ピンクの濃淡色、紫の濃淡色やラベンダー色、クリーム色など。
さて、いかがでしょうか。最初の配色方法以外は、カラーウィールを理解して、アレンジメントも少し進んだ方、中級、上級者向けとなります。
初心者の場合は、とにかくシンプルに考えるのが一番です。あまりたくさんの情報を一度に得ても、情報過多になり理解しにくくなるものです。しかし、いずれ、アレンジメントのテクニックを身につけるにつれてどんどん興味も広がってくるものですから、ここでご紹介したものは、将来の参考にしてください。
Works cited:
(*1)Kohler,Cathy. "Got Color? Color guru Leatrice Eiseman helps florists cash in on color." Floral Management,July 2004,Vol.21 No.5
(*2)"Basic Color Principal" The AFS Color Wheel, AFS Education Center, American Floral Services,Inc.,1990.
(*3)"Color Harmonies" The AFS Color Wheel, AFS Education Center, American Floral Services,Inc.,1990.
(*4)Eiseman, Leatrice. Colors for your every mood. Sterling,VA. Capital Books, Inc., 2000