『花を活ける前に』 花材の扱い方 − 水あげの方法
花を活ける前に、必ずしなければならない最重要事項とは?
Q: 花を買ってきたら、一番最初に何をしますか?
A: 水あげをしてあげてください。でも、その前に、痛んだ葉っぱや、茎のしたの方の葉を全部取り去って、茎の手入れをしましょう。これは、茎からしっかり水があがって、花をイキイキ保つためには、かかせない花の下処理です。
Q: 水あげとは、なんですか?
A: あなたが花を買ってきたとして、ウチに持って帰ったらまず行う、花に水を吸わせる作業のことです。いただいた花束も、まずはしっかり水あげしてから、アレンジしてください。
この水あげをするとしないのとでは、観賞期間が全く違いますから、絶対にはずせません。 アレンジのセンスを磨く以前のマナーとして、きちんと知っていた方がよいことです。
特に夏場は、そのまま活けたのでは花があまり持ちません。きれいな花を少しでも長持ちさせるために、これはしっかりマスターしましょう。
「私、お花大好き!」なんていいながら、活けっぱなしで、花を簡単にしおれさせるようなら、花を愛しているとは言えませんよね。。。
うっかり水あげが甘い花は、2日ほど経つと花首がくた〜としてきます。
しかし、同じ花でもしっかり水あげした花は、ぴんぴんしています。
このように、一度しおれかかると、早い処置だとまた復活してイキイキしてくることもありますが、ちょっとタイミングが遅れると、もうそのまま一気にしおれてしまいます。
水あげの方法は、いくつもあって、花の種類によって使い分けた方がよいとあります。
しかし、この方法は一番簡単でどの花にも通じますから、この水あげ方だけは絶対に覚えておいてください。それは、水切りと言います。
水切り
水切りは、ただシンプルに、ボールやバケツに水を張って、その中に茎の部分をどっぷりと入れて、その入れたままの状態で、花のはさみで茎の先の方2cmくらいのところを、なるべく切り口をななめにパチンと切るやり方のことです。
茎を水の中にどっぷり入れて、その先を2cmくらいパチン!
これが一番簡単で確かな方法。
ポイントは、2つ。
これは、水を吸う断面の面積をできるだけ大きくとると、それだけ水もあがりやすくなるという原理からです。
茎を切りやすくするコツは、ボールに水をなみなみと張ること!
そして、そのままたっぷりの水(バケツを用意)につかるようにしておくと(深水と言います)、1時間もしないうちにどんどん水があがって、花がとても元気にシャキッとしてきます。
用意するものは、3つ。
もし、時間がなかったら、茎をそのまま花はさみでパチンと切って、間髪をおかずに即!水につける(深水)という手もあります。これでもだいたいは大丈夫です。アメリカの花屋さんは、ほとんどこの簡略法で水切りしています。
元気のよい花は、水切りしながら、即活け始めて結構です。アレンジも水切りを丁寧にしながら活けると、より持ちがよくなります。
注意する点としては、水につかる部分の葉は全て落としておくこと。葉がたくさんあると、水が早くよごれます。また、葉の分だけ余分にその花に水が必要になりますので、きれいな葉だけ残して、残りはなるべく葉を切り落としてください。
初心者の方は、この水切り方法だけで、ほとんど全ての花に対応してOKです。あまりむずがしく考えなくても大丈夫。ボールにたっぷり水を張って、その中でただ、ななめにパチン! このシンプルな水切りをするだけでも、全然、持ちが違うのがわかるはずです。
他にもいろいろな種類の花に対応するやり方がありますので、ただ知識として持っておいてもよいかもしれません。ですから、ここでは、簡単にご紹介いたしましょう。もっと、たくさん花材を扱えるようになったら、それぞれ必要になってくる水あげ方です。
花の専門店では、以下のいずれかの方法で、花を店頭に並べる前に、きちんと花の処理をしていますので、安心して花をお求めください。花を買って家に帰ってから、ちょっとだけまた上記の水切りをしてあげれば、ほとんどの場合は大丈夫ですから。
水折り
生け花では、この方法を用いるところもあります。茎がパキッと折れる枝ものや花材に適しています。特に、菊。
やり方は、茎を水中に浸したまま、両手で力を加えて茎を折ります。その時、折った断面がぎざぎざの方がよりほぐれた断面から水をぐんぐん吸い上げてくれます。 ですから、あまり気にせずに、水の中でポキッ。そして、そのまま水につけておきましょう。
深水(ふかみず)
水切りや水折りしてみても、まだ元気が足りないと思ったら、この深水を試してみてください。「深水」は、文字通り、深い水、たっぷりの水に茎の部分をつける方法です。
まずは、普通に水切りしますが、このとき、しっかり水があがるようにするために、花を新聞紙が巻いてからやります。そして、水切り後、たっぷりのお水にドボンとつけてください。新聞紙が濡れた方が、水分の蒸散を防ぐためにもよいです。
少し面倒ですが、すみずみまで水を行き渡らせる効果的な水あげ方法です。
湯あげ
効果は、プロ並みと言われる方法です。お湯は60度以上を用意し、お湯に茎の先をほんの一瞬ですが、さっとつけてから深水にするとよいです。温冷で空気圧を変えることによって、水を吸い上げやすくなると言います。
茎の先は、前に水切りしてなくてもかまいませんが、まっすぐに揃うように、茎をきりそろえることがポイントです。その方が、お湯につけやすいですから、茎の色が変わったらさっと取り出して、深水にします。
注意としては、お湯によって花の葉先などが痛みやすいので、花をしっかり新聞紙にくるんで茎だけだしておいてください。このとき、隙間なくきっちりと巻くのがコツです。
丈の長い薔薇やひまわり、ライラックなどにこの方法は効果的です。
この湯あげは、私も早く花を咲かせたいときに時々やりますが、とても効果があります。しかし、ちょっと面倒なのが難点ですね。。。
切り口を焼く
湯あげのテクニックと同じ原理ですが、こちらは直接茎をバーナーで焼いてしまいます。もしくは、キッチンのコンロで直接茎の部分を焼いてもOKです。この燃焼法の方が、他の水あげ方に比べて、水をきれいにする浄化作用があると言われます。
やり方は、湯あげと全く同じ方法で、茎に熱を加えたらすぐに深水にします。少しこげるくらいに焼くとよいようです。このとき、茎を逆さに持って、茎の先だけ1〜5cmくらいまでを黒い炭状態になるくらい焼ききって大丈夫です。
やはりこれも、丈の長い薔薇やひまわり、ライラックなどに適しています。
切り口をたたく
茎が固いものは、茎の先をハンマーでたたいて水あげをします。茎の先がぎざぎざになると、そこからどんどん水を吸い上げるようになります。枝ものの処理に適しています。
切り込みを入れる
茎が固くて、とても花はさみで切れない場合があります。その時は、枝の切り口に一文字、または十文字に切り込みを入れる方法をとりましょう。そうすると、吸水面を広げてあげることができますので、水がしっかりあがってきます。この方法もまた、枝ものの処理に適しています。
以上です。花をみずみずしく保つコツを覚えて、長く花を楽しんでくださいね。