フラワーアレンジメントの歴史――そして、アメリカの場合
フラワーアレンジメントの歴史として知られていることは、古く紀元前2000年に地中海及びヨーロッパで発生したといわれています。エジプトやギリシャの記録には、遺跡や壁画などの発掘により、当時は、宗教的行事やお祝いのときだけに、装飾されていたことがわかりました。
その後、ローマ帝国時代になって、庶民の家庭にも花を飾ることが入ってきました。また、リースやガーラントなどの装飾品がよく見られるようになりました。
今見られるフラワーデザインの基礎は、イタリアビザンチン文化で開花したとされています。ベネチアグラスの花瓶などは、この当時に大いに栄えたもの。一般庶民の家庭を花が飾るようになります。これが、フラワーアレンジメントの歴史の第1幕の始まりです。
さて、アメリカには、いつ頃に伝えられたのでしょう?
エジプト、ギリシャ、イタリア、イギリス、フランス、オランダなどの地を経て、1600年前後に、移民によってアメリカに伝えられました。移民たちは、ポケットにヨーロッパで盛んだった花の種や根を入れて、船で渡り、住み着いた土地にそれらを植えるようになりました。そうやって故郷をしのんだことでしょう。
その当時は、豊富な花の量と色合いを強調した、MASS ARRANGEMENT(マス・アレンジメント)と呼ばれるものでした。つまり、たくさんの花を色取り合わせて、どっしりと活けるものです。ボリュウームたっぷりの活け方になります。
ここに、アメリカのフラワーアレンジメントの初期のころの貴重な本があります。
FLOWER ARRANGING (2nd Edition)
By Better Homes & Gardens in 1965(*1)
このFLOWER ARRANGING の本は、1965年、つまり日本では昭和40年度の出版冊です。
そのIntroduction(初めに)を読みますと、1st Edition は、その8年前、つまり1957年(昭和32年)に出版されたそうです。その本は、フラワーアレンジメントの紹介の本としては、業界最初の本であって、ミリオンコピー(100万冊)売れて、大ベストセラーになったとのことです。
このBetter Homes & Gardens 出版社というのは、今でもアメリカの主流の出版社です。ここで始めて、「家庭でも手軽にフラワーアレンジメントを楽しめますよ、」というメッセージを世に送り、その後のフラワーアレンジメントの普及に大きく貢献しました。
その後、アメリカではブルーや紫といった寒色系の花が主流となる時代がきます。19世紀がそうです。
20世紀になって、第一次世界大戦後に、フラワーアレンジメントが全米に普及されるようになったといわれています。また、そのころ、日本から華道が紹介され始めました。華道の線の美を強調する、目新しいLINE ARRANGEMENT(ライン・アレンジメント)が加わり、アメリカに、新しいスタイルが生まれ始めました。
見てください!この古そうな写真。。。
こんな形で、日本の生け花が紹介されていたのですね。↓ ↓ ↓
↑ (Flower Arranging,1965. p.28)(*1)
アメリカでは、ヨーロッパ初期の基本的なアレンジメントを基調にしながらも、アメリカならではの自由な表現、個性を加えて出来た今日のフラワーアレンジメントは、「ニューアート」とも呼ばれるようになりました。
↑ (Flower Arranging,1965. p.24)(*1)
現在のアメリカでは、AIFD(American Institute of Floral Design)という花の協会があり、全米ネットワークでフラワーアレンジメントの研究及び普及に努めています。毎年、独立記念日(7/4)あたりに全米の一都市が選ばれ、全国大会が開催されます。3−4日にわたり、さまざまなアレンジメントの新作品の発表があり、全米のフラワーデザイナーたちの絆を強くしています。
この大会には、世界中から名だたるフラワーデザイナーたちが集まり、新テクニックや新デザインを披露してくれます。大変、レベルの高い人たちの集まりとして注目されています。
AIFDで資格をとった人達が、お互いの技術の研鑽のために、毎年の全国大会が行われているわけですが、そこで活躍するデザイナーたちが、今日のアメリカのフラワーアレンジメントの技術を高めるのに、貢献しています。
★もっと他のアメリカのフラワーデザイナー達の作品集を見たい方は、アメリカのおもしろアレンジのページへ→
日本へは、どのようにして伝わったのでしょうか?
日本に紹介されたのは、もちろん第2次大戦後になりますが、生け花の技術を身につけた先生が、最初は、アメリカやヨーロッパの本を片手に、独学されたと聞いております。
↑ (Flower Arranging,1965. p.20)(*1)
日本の生け花を基礎として、フラワーアレンジメントの取得に発展させたことは、大いに意義があると思います。テクニックこそ違えど、花を活ける心は同じですから、新しいアイデアの取得にさぞ胸を弾ませたことでしょう。
しかし、何事もパイオニアで開拓するということは、大変な努力を必要としますから、さぞご苦労があったことと思います。その開拓精神と不屈の芸術魂に感服いたします。
↑ (Flower Arranging,1965. p.18)(*1)
Works cited:
(*1) Better Homes & Gardens, Flower Arranging, New York, Des Moines, Meredith Press, 2nd Ed. 1965