センターピースの始まりの話
『センターピース』とは、フラワーアレンジメント用語で、テーブルの真ん中に飾るアレンジメントのことを言います。↓ ↓
これは、アレンジメントのスタイルの一つで、つまり四方見の活け方のことです。どこの角度からも、満遍なくきれいに花が入っています。
他には、代表的なものに『アップライト』と言うものがありますが、これは、壁際に飾るアレンジのことで、三方見をさします。これは、後ろには花を入れる必要はなく、前面と両脇がきれいにアレンジされています。→
← フラワーアレンジメントは、丸い形のラウンドの『センターピース』が基礎になります。
さて、この『センターピース』という言葉は、いったい、いつ?どうして始まったのでしょうか?。。。
昔、昔、ヨーロッパの貴族社会において、ディナーのメインコースが終わると、その家の美術品、誇れるもの、例えば凝った美術品や、銀細工、ガラス工芸品など、いわゆる芸術作品などがテーブルの上に持ち込まれ、観賞する慣わしがあったそうです。
つまりは、これが『センターピース』の始まりとのこと。
『センターピース』」は、最初は、食卓テーブルの中央の飾りのことを指していたんですね。そのうちに、装飾品の代わりに、テーブルに花を飾るようになりました。
そうすると、その場にふさわしいムードを盛り上げるのに一役かったのでしょう。
やはり、貴族社会から花を飾ることが始まったというわけです。
さて、そうなると、テーブル花をデザインするとき、アレンジするときには、どのような点に注意したらよいでしょうか?
今は、季節の花を中心にアレンジすることが多いですが、正統派としては、こんな点に考慮して、まずは、ふさわしい花器を決めてから活けていきます。
- テーブルの形
- 大きさ
- 部屋の背
- 壁の色
- そして、テーブルクロスの色や織り目
- はたまた食器の色、形など
テーブルが楕円形(オーバル)なら、アレンジメントの形も丸ではなく、横を長めにとったオーバルにしたり、部屋の壁紙に薄いピンクが入っていたりしたら、黄色ではなくやはりピンク系の花でまとめるとか、テーブルクロスが柄物だと、その中の一つのカラーを入れてアレンジするとか。。。
やはりアレンジメントは奥が深いから、いろんなことを知っておいた方がいいですね。 学ぶことがたくさんあります。終わりはないですね。。。
センターピースのおもしろエピソード 1
私が、マンハッタンのアッパーイーストにある、高級店が立ち並ぶ一角の花屋で、インターンとして働いていたころの話です。
あるニューヨークのお金持ちの女性が、大きな絵皿を3枚ほど、大事そうにかかえて持ち込んできました。その絵皿は、大きなお刺身皿くらいのサイズで(直径は40−50センチ)、アンティークのようです。とても値打ちがありそうに見えました。
その絵皿に、センターピースを活けて欲しいという依頼です。パーティを開くのに、その絵皿に花を活けたものを飾りたいというのです。お決まりの、花屋の花器は要らないということでしょう。
ここ2−3年、同じ依頼をしてくる女性ということでした。花の色合わせは、もちろんその絵皿に合わせてということです。深い色合いが多い、まるで日本の古典的な柄の伊万里焼のような絵皿でした。
その客が帰った頃、私はその絵皿を見てみようと思い、そーっと裏をひっくり返したりしたかったのですが、花屋のマネージャーに、「へたに触るな。壊したりしたら、弁償できないくらい高いんだからな。」と厳しく注意され、結局は外側からじろじろ見るだけに。。。
「相当に価値あるものだから」と説明があったそうです。大きな絵皿ですから、立てかけて飾りものにしていたのかもしれません。
その活けこみは、大中小あわせて3枚の絵皿分ですから、御代は何百ドルになったのでしょうか。お金持ちのこだわりは、決して金額ではありませんね。
どうしても、その絵皿に活けたセンターピースをパーティに飾りたい、と言うのですから、すごいものです。私は、その引渡しの当日は立ち会えなかったのですが、ピンクのしゃくやくの花(ピオニーと言います)をふんだんに入れての豪華なアレンジになったと聞きました。
センターピースのおもしろエピソード 2
これは、私にフラワーアレンジメントを教えてくれたアメリカ人の先生から聞いた話です。
あるジューイッシュ(ユダヤ人)のご婦人からの依頼で、自宅での食事会に、ご主人様の重要なお客様を招待しているから、お部屋とテーブルを飾る花を頼まれたそうです。
ユダヤ人のことを、英語でJewish(ジューイッシュ)といいます。ニューヨークには、たくさんのユダヤ人が住んでおり、「ジューイッシュ = お金持ち」というイメージが強いものです。
お金をもうけるのがとても上手といわれており、金融関係、宝石商関係のかなりの部分は、実質、このユダヤ人たちが占めています。
そして、ユダヤ人たちは、自分たちの伝統をきっちりと守るのにたけている人種のようで、今でも教会のしきたりや習慣を子供たちにしっかりと伝えています。
さて、そのアレンジメントの依頼は、ちょっと風変わりで、「まるで自分が活けたように仕上げてほしい」というリクエストでした。
ご主人様の仕事上、とても大切な決定がされるかもしれないというその食事会には、奥様の内助の功も見せなくては、というのでしょうか。「これ、私が活けたのよ」と、お客様に主張したいのでしょうね。
私の先生は、「ちょっと困ったけど、いつものようにまとめたわ。希望のジュエルカラーのアレンジメントにして」と言っていました。その方のお宅は、それは豪邸で部屋数も多く、玄関ホールもリビングもダイニングも超豪華で、花の飾りがいもあったと聞きました。
さて、「ジュエルカラー」とは、文字通り「宝石のような色」という意味合いで、ルビーやサファイヤ、エメラルドを想像するような、はっきりとした色使いで綺麗にまとめるという意味です。きっと、インテリアはシックで落ち着いた色調だったのでしょうね。ベージュや茶色が基調なら、派手な色合いの花はとても映えることでしょう。
シロウトらしさも少し加えながら(?)のアレンジの依頼というのも、おもしろいものだと思いました。もちろん、そのアレンジメントも金額を問わずの活けこみだったことでしょう。